京の夏、蝉時雨

五重塔の下にはためくは

武田・風林火山の御旗





the dawn




晴天に、高々と突き上げる、人差し指

「お館様!ついに・・・ついにっっ!!!」

一番槍として、常にその最前線に立ち続けてきた幸村の、黒い双眸から涙が溢れる。
感慨が一入なのも、彼ならば無理はない。


と。

「隙有り!!!」

白日を背負って飛来する影。
咄嗟に幸村は腕を組み、其の強かな蹴りを弾き返した。
後方宙返りを打つ甲斐の虎の姿に、一体何人のプレイヤーが某無双3のOP編集を連想したことか。

ともあれ。

反撃の一打を決めようと、突きだした其の拳の先に、誰よりも敬愛するお館様の姿を認め、幸村は。

「お、お館様!!」

素直に膝を折った。
此の程度の不遜を咎める信玄ではない。


「強う成ったな、幸村。」

悠然と佇み、静かに、一言。
幸村は強く頭を振った。

「強いのは、お館様にございます!!天下を・・・ついに、天下をお取りに!!」

諸々の想いに打ち震え、再び滂沱の涙に暮れる。
居並ぶ兵たちが無言なのは、多分慣れている所為だと、思う。

平生なら、此処で信玄の拳の一つや二つ、飛んで然るべきであった。
だが。



「・・・・・年寄りの出番は、終わったのやも知れぬな。」



静かに、唯々静かに紡がれたのは。

誰も、予想だにしていなかった、そんな一言。










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幸村ED文章化。
武田軍は3人揃ってエンディングが続きになってます。
うちの場合、其処へ勘助も混ぜ込むという暴挙に出ましたが。
何を差し置いてもとにかく、「お館様が何処から飛んできたのか」が
気になって仕方がない。
・・・・・この話、お館様のEDに続きます。
Amor Kana様の「誕生」を聞きながらプチプチと。

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