嗚呼、人は斯くの如く恋に落ち
理想の結果を待ち侘びて、焦がれるものなのだ。
たとえ
永久に、実りなど無いと・・・わかっていても
【 Yield 】
何故 相応しい時に出逢えなかったのか
其の不運を・・・呪う
「良き手合わせでございましたな。」
目の前で微笑む、甲斐の紅蓮の炎。
この笑顔に逢いたくて、政宗は。
「Ha.まだまだオレの方が上手だぜ。」
「ならば貴殿を上回るまで、勝負するまで。」
何度も何度も、甲斐を訪れる。
名目上は手合わせの為、だが、其の真意は・・・。
まるで、理想とする収穫を確実にする為
幾度も種を蒔く人のような、行為
(嗚呼、けれど其の実りは)
(夏が過ぎ、秋が来たところで・・・)
(否・・・幾星霜待ち続けたとしても・・・)
紛れもなく、政宗と幸村の関係は“知己”であり、“好敵手”であった。
其れ以上でも、其れ以下でもない。
けれど政宗は、幸村に惚れていた。
遠い昔、政宗が失くしてしまった、何か。
とても眩しい其れを持っているかのような・・・
燃え上がる太陽に似た、明るい幸村に。
・・・心底、惚れていた。
(たとえ、実ることなど無いと知っていても)
(募る想いを・・・止める術など無く)
向かい合い、座したまま、語らい合う穏やかな時間。
其れが、永遠になったらいいのに。
何時も政宗は、そんな夢想を胸に抱く。
そして、其れはいつも
・・・途端に突きつけられる残酷な現実が、打ち砕くのだ。
「旦那、ちょっと良い?」
「おお、佐助!!」
其れこそ、大輪の向日葵が咲いたような笑顔。
眩しくて、愛しいけれど、憎たらしい・・・そんな顔で、笑ったりして。
・・・そんな笑顔を、させたりして。
猿飛佐助。
政宗の思いが叶わない、其の理由は彼の名だけで総て語り尽くせる。
政宗が幸村と出逢った時、既に幸村は佐助の“恋人”だった。
唇も、そして躰も、幾度と無く重ねたのであろう事は明白で。
・・・否。
あからさまに其れを匂わせて、牽制したのは佐助の方。
(旦那は、オレのだからね?)
弾いた刃の残響が、そう揺らいで消えたあの日の摺上原。
忘れられない。
忘れることなんて出来ない。
「と言う訳で。悪いねー、竜の旦那。ちょっとさ、十勇士の連中が呼んでるんだよねー。」
「申し訳ござらぬ、政宗殿。急を要するらしく・・・。」
政宗の思考の傍らで、佐助が幸村を連れて行く旨を述べていたらしい。
話半分どころか、大半聞いていなかったが、止める理由も術もない。
「いいさ・・・行ってこい。」
送り出す背中、其れも何時ものこと。
甲斐に来る度の、恒例のこと。
去り際、佐助は重ねて云う。
「ごっめんねー。じゃあ、ちょっとうちの旦那、借りていくから。」
云うほどには悪いと思っていないのだろう。口調で分かる。
踵を返しつつ、眸に浮かべた色彩で告げる。
(アンタなんかに、旦那は渡さない。)
絶対零度の、其れは殺意混じりの宣告。
甲斐に来て、手合わせした後は決まって。
幸村は佐助に呼ばれ、何処へともなく連れて行かれる。
理由は其の都度其の都度違うのだが。
二人で“して”いることが何か、なんて
考えるまでも、ない・・・
――――――― 嗚呼
(どうして、あいつなんだ?)
繰り返す、悔やんでも還らない虚しい言葉。
何故、あいつと先に出逢った?
何故、相応しい時期に出逢えなかった?
(お前を幸せにしたいのに、お前と幸せになりたいのに)
出逢った時が遅すぎた、ああでもそんなことで諦められない。
紅い果実、苦い恋。
根雪の下で、実りを待ち続けても
其れは・・・あまりに遠すぎて
(そもそも、実りなどというモノ自体、訪れるようには思えなくて)
其の夜の、酒宴の折り。
首筋や襟元に散らされた紅い痕を、必死になって幸村は隠そうとしていた。
隠しきれていない幾つかの其れを、政宗が既に見つけているともわからずに。
これ見よがしに痕をつけた忍は、何処か外から見張ってでもいるのだろう、その場に姿はなかった。
「どうした、幸村。顔色が良くないぜ?」
「いえ・・・大丈夫でござる。」
朗らかな、けれど何処かぎこちない物言い。
座り方も、そして動作も、明らかに腰を庇う仕草が見て取れる。
(Shit...)
伏し目がちな幸村の視線が
“どうか気付かないで”と、声無き悲鳴を上げていた。
(なあ、幸村。もう知っていると、オレがそう言ったら、お前は・・・)
絶望、するだろうか。
政宗には痛いほど伝わっていた。
幸村は、佐助との関係を何としてでも知られたくないと、願っていること。
理由は多分、知られて軽蔑されるのが
そして、手合わせの時本気を出してもらえなくなるのが恐いから・・・だと思う。
もっとも、どちらも根拠のない憶測だが。
(ただひとつ明らかなのは、恋心などと言う甘い理由ではないことだけ)
けれど、でも
まるで、恋人に不義が露見するのを恐れるような其の振る舞いが
政宗の心の水面に、小さな細波を起こす。
(愛しい人に、知られまいと必死になっているように・・・見えて・・・)
なあ、幸村
知っているぜ、何もかも
今日、お前があの忍に抱かれたことも
なあ、幸村・・・
たとえ攫ってでも、お前を奪いたいと
・・・オレが、思っていることを知ったら、お前は・・・・・
表面上だけは和やかな、酒宴の談笑。
向かい合う互いの距離は、こんなにも近いのに。
其の心の遠さが、切なくて。
“Harvest ... harvest ... It yields fruit ... ”
待ち望むのは、理想の収穫
“真田幸村”という存在が欲しい
でも
“Lala latest harvest ...? ”
実りの秋は、来ない。
†††††††††††††††
『Sound Horizon』の同名歌ネタ。
我が生涯最高の友、雪月望嬢に捧げます(拝)
もぎ獲れないのなら、刈り取れば・・・に到れない、だから悲恋な伊達様です。
てゆか、悲恋つーかなんつーか(汗)
ゆっきは、伊達様に対して恋愛感情零です。
佐助との関係を知られたくないのは、手合わせで手加減されたら厭なのと、
佐助に抱かれるのはものっそい背徳的な行為だと思っている為。
伊達への恋心から・・・ではないです、断じて ←ヒデェ
けれど佐助を拒めない幸村と、其れを知っていて独占欲剥き出しにする佐助。
・・・本気でもう少し間違うと、刈り取られてしまいそうですね(破月お前がな)
伊達サイドなら“Yield”なのですが、幸村サイドならきっと“Ark”、そんな気がしてならない
此処の三角関係です。
・・・あ゛。
イカン、これだとどのみち佐助殺され・・・(ガタガタ)
まあ、此処で一番非道い男なのは多分佐助だから、仕方ないと云えば・・・
仕方ないと云うことで(破月さんもう黙ろう貴様)
何より心配なのが、英語のスペルと文法だという痛ましさが・・・アイタタ。