漆黒の奈落を其の身に宿して

降り注ぐ呪詛を其の両腕に抱いて

尚も、其処に在り続ける


哀しい横顔

麗しい横顔




・・・たとえ 此の想い 届かなくても 




【 紫水晶の横顔 】





彼は 病的に白い 其の存在に恋をして、仕舞った




黄昏の最後の光線が、闇へと沈み移ろう頃。
躑躅ヶ崎館の裏山には、低く歌う声が揺らぐことがある。



「誰かと思えばお前か、勘助。」
「修理亮・・・」

奏でる旋律に誘われ、昌豊は其の日、落葉を踏みしめて薄暗い山の奥へと踏み入った。
見つけた嬌艶の闇軍師は、桜の古木色をした髪を、そよぐ宵の風になびかせて。
夕闇の中に凛と佇み、其の華奢な立ち姿はしかしながら、背筋が凍る程美しかった。

「こんな時分、こんなところで何を歌っていた?今宵は酒宴だそうだから、其処ででも歌えば・・・」

「其れは、出来ない。」

はっきりと。
昌豊の両眼を其の濡れたような隻眼で見つめ返し、勘助は言った。

「死者への・・・手向けの歌だから。」

ぽつり、零した言葉には、諸々の押し殺された感情が渦巻いて。
思わず、息を、飲んだ。




「地下で・・・息絶えた者は総て、此処へ運んでいる。此の地は終焉の地なのだよ。」

云いながら勘助は、じっと己の両手を見ていた。

「生きた、まま・・・火に投じた。苦悶の内に焼け焦げた其の者を、今し方葬った。」
「勘助、」
「手向けも赦されぬ。故郷への帰還さえ。弔う者も無しではあまりに・・・哀れで。」

殺しておいて、死後の弔いをせずにはいられんのだ。

自嘲のように微笑む勘助を、昌豊は唯灼かれるような思いで見つめていた。









†††††††††††††††
うちの内藤さんが、勘助に落ちた瞬間。
勘助は、もう自分が呪われている生き物だから、つーて此の手の汚れた仕事を一手に
引き受けている人です。
それも、比喩とかそういうのじゃなくて、マジに呪われています、うちの勘助。
だから人寄せ付けないんですよ。
専用の地下拷問部屋があるくらいですから、うちの躑躅ヶ崎館は。
勘助は其処で、尋問拷問を一人引き受けて処理しています。
佐助にも手伝わせません。
てゆか、勘助以外立ち入り禁止です。
佐助は入り込んじゃうから、もう諦めモードで容認ですが(おいおいおい!!)

で。
殺すは殺すけれど、其れも残忍なことも平然とやってのけるけれど、基本
慈悲深いんです、勘助は。
だから、弔いとか、せめてもの手向けとか、せずには居られない。
そういった面を全面にさらけ出して、その上で勘助を愛し愛されているのがお館様なのですが。
(あ、勘助とお館様、うちではくっつけています、バリバリに・・・
 ・・・其れらしさが感じられないですが。)
だから偶に、こんな一面に他人が遭遇すると・・・大変です。即落ちる。
ただでさえ、背筋が凍る程美しい男なんだから勘助・・・!!

ああ、こじゅが勘助攫ってく話とか、竹中と対峙する勘助の話とか書きたい。
(破月さん、墓穴が仕上がりましたから速やかに入って下さいね)