舞い上がるのは、深紅

添い咲き天へと駆ける、影


軽やかな舞にも似た其の武は

戦陣を艶やかに彩って




【 Danza, fanciulla gentile 】







背中を預け合えるのは
他でもない、お互い同士だから

「一人頭250人ね、旦那。」
「人数など、たいした問題ではない。この陣を崩せば良いだけのこと!」
「はいはい。旦那は明快で良いね。」

軽口をたたき合う二人に、突き刺さる無数の、視線。
当然である。

敵の伏兵の、真っ直中なのだから。

天翔る武田の炎と名高き真田隊を、兎にも角にも潰してしまう算段なのだろう。
十重二十重に取り囲む敵兵の数、凡そ500。
対する真田隊は、巧妙に分断されて、佐助と幸村のただ二人のみ。
けれど。

「佐助、某の背中はお前に任せたぞ!!」
「旦那こそ、俺の背面援護お願いしますよ!?」

些かの恐れもなく
否、寧ろ
此の状況を、楽しむかのような風情で居られるのは

他ならぬ、二人だから

他の誰でもない、此の二人で居るから


たかだか敵の伏兵如き、何が恐ろしいものか!!

(そう、怖いのは、互いの存在を喪失すること、ただ一つ)

だから、何が何でも失わない為に、無くさない為に


持てる全ての力を、武を奮う。



「ぅおおおるぁああっっっ!!150ぅぅぅっっっ!!!」
「ひゃーくろーくじゅっ!!」
「むっ!?佐助に遅れは取らぬぞ!!」


鮮赤を撒き散らし
白い煌めきの奇跡を描いて舞う、二対の刃
其の華麗な様は、当に喩えの如く、舞に似て。



「旦那危ない!!」

幸村の耳元を掠め、槍を繰り出してきた狼藉者に御礼の一撃。

「済まぬな、佐助・・・烈火ッッ!!!」

半瞬ばかりの笑顔を掻き消し、苛烈な突きを繰り出した其の先には
どうやら、些細な隙をつくのが得意であったらしい卑怯者の、成れの果て。

「手助けは有り難いが、慢心はするでないぞ!」
「其れ、旦那がいっっも大将に言われてることでしょ?」

命が交錯し合う、当に其の渦中で。
其れでも、二人の顔から笑みは消えたりしない。


何も怖くない、あなたの傍で闘うこの瞬間は、何も、何も。


舞い上がる深紅の炎に
寄り添い映えるのは蒼天の影

燃え上がる二槍が
空を裂く手裏剣が

敵兵の山を瞬く間に切り崩す。




二人、共に闘う戦場には、怖いものなど何も無い。













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タイトルと同名の曲が、「VAGRANCY」様に素材として追加された独り記念祭の産物。
この曲は、気が付いたらBASARA幸村のテーマ曲になってた。
勇ましくて、華やかで、イメージは一騎当千の紅い花。そんな感じ。