はらはら舞い散る
はらはら踊る

桜 さくら 舞い散れ桜

其の花影の向こうに、あなたの面影を葬ろう





『幸村になら、似合うと思った。』

そう
少し照れくさそうに、言って。
ある春の日の黄昏時に、三成が幸村に手渡したモノは。

『綺麗ですね。桜色の・・・水晶ですか?』
『ああ。お前には桜が似合うから、此の石もきっとに合うだろうと・・・』

其処まで言って
三成は漸く、自分が何を言っているのか気づいたらしかった。

『い、いや、別に俺は、其の、』
『ありがとうございます、三成殿。』

首まで真っ赤に染めてあわあわと手を振る三成は、平生の彼らしくもなく取り乱していて。
其れがまた、怜悧な彼の人の人間らしい一面に触れられたように感じられて。

あまりにも美しく透き通った、其の桜色の水晶が
自分に似合うといわれたことなど、さしたる問題には感じなかった。
桜が似合うといわれたことも、何時だったか三成と兼続とで二人して太鼓判を押していたから、
今更気にも留めなかった。


・・・何より
其の透き通り、時に日の光を反射して星の煌めきを宿す石が似合う、と
他の誰より其れが似合いそうな三成にいわれたことが、嬉しくて、少し照れくさくて、でも誇らしくて

其の日から、其れは幸村の御守りとなった。


豊臣の世が傾き、徳川の影が台頭し始めた時も

家康と三成の対立がいよいよ表面化し、諸将も三成派と家康派に別れたはじめた時も

関ヶ原で戦の狼煙が上がった瞬間も


小さな桜色の美しい石は、常に幸村の掌中で煌めいていた。
其の煌めきの向こうに、不器用極まりない最愛の友の姿を揺らめかせながら。

だから幸村は闘えたのだ。
秀忠の軍勢を前にして、少しも怯んだりせずに。
だから幸村は戦うことが出来たのだ。
姿形ではなく心で、魂で

三成は傍にいる、そう感じられたから。




・・・・・それなのに


三成が処刑されたあくる朝、石は粉々に砕けていた。
まるで、彼の人の命の分身ででもあったかのように。
まるで、其の石もまた三成であったというかのように。


「三成殿・・・・」

呼んでも、呼んでも
三成は答えてくれない。
砕けた石は元に戻らない。





はらはら風に舞い散れ桜
はらはら風に踊れよさくら

其の花吹雪が全ての記憶を閉ざし逝く

ゆらゆら、記憶の幻灯が揺れる其の幕は桜色
透き通った桜色の霞の向こうに

あの人の面影も刹那に消える


降りしきり舞い踊る、桜の花と石のかけらの向こう側に。







 
 
 

††††††††††††††††
マダガスカルローズクォーツに魅了された萌人です(土下座)
綺麗な桜色は幸村の色だと直感した深夜二次、脳みそは・・・
終わってます。