真夏日の静寂
誰も予想していなかった其の言葉が
呪縛のように、のしかかった
せみしぐれ
「年寄りの出番は、終わったのかもしれんな。」
其れは、天下太平という大仕事を成し終えた虎の、嘆息であった。
らしからぬ其の発言に、幸村は息を呑む。
意に介さず信玄は、悠然と踵を返した。
刹那、
「ぐぅっっ・・・・・・・」
苦悶の声と共に、頽れる後ろ姿。
「!?お館様ァァァ!!」
あまりの出来事に、混乱しかけた頭のまま、兎にも角にも幸村は立ち上がり、信玄に駆け寄った。
甲斐甲斐しい其の姿勢に、返されたのは。
「ふん!などと弱音を吐く、わしと思うてか!!!」
冗談にしては笑えないにも程がある、そして幸村の何かを試すつもりだったのだとしたら、
一体何を、どう試す心積もりで居たのか甚だ謎な咆吼と共に、特大級に重い拳が振られた。
「!!」
以前は、為す術もなく其の一撃に吹き飛ばされていた幸村だが。
今回は違った。
伸ばされる腕を、拳を交差させるようにして。
力の限り拳骨を握りしめ、腕を伸ばした。
みごっっ「ぬぁ・・・・」
ずびしっ「うぉ・・・・・」
静寂。
蝉時雨。
信玄と幸村、互いが放った拳は、寸分の狂いもなく。
互いの頬へとめり込んでいた。
見守る兵士は、やはり黙して立つばかり。
もう、慣れ以外の何者とも思えない光景であった。
「・・・幸村!」
「・・・お館様!」
ややあって。
互いの拳で歪んだままの頬から、吐き出されたのは唯それぞれの名前だけ。
もう、こうなると言葉というものは意味など持たなくなるのが、この主従。
「幸村ぁ!!」
「お館様ぁ!!」
「ゆきむらあ!!!」
「おやかたさまあ!!!」
「ぃゆきむるぁ!!!!!」
・・・・・以下、エンドレス。
夏の日差しの眩しい都に、殴り合いの音だけがこだましていた。
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お館様ED。他に比べて異様なまでに、文章にしにくかった・・・。
もう、最後まで拳で語り合いですよ。
誰か何とかして下され、頼みます・・・るー・・・
しつこいですが、このあと佐助のEDへ、そして勘助の妄想EDへと続きます。
遠来未来様の「七曜−土−」を聴きながらもそもそと。
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