あなたのことを

誰よりも愛してる

――――― 今も





【水のない晴れた海へ】





倒れ伏した その眸に映るのは

水のない、晴れた海

夢にまで見た楽園は

ただ 静寂の孤独(ひとり)のセカイ




空を映して眠る海の碧が
閉ざした瞼の裏にさえ、明滅するように・・・沁みる。




(佐助・・・・・・・・・・)





愛しいヒトの名を呼んで差し伸べた手の、血の紅は


夜明け前の空の、薄蒼に映えるばかり





溺れるほどに 想いは深い

―――――― まだ。






伊達の猛攻の前に、武田が陥落して、半年。

最北を平定し、上杉を滅ぼした、伊達。

其のまま破竹の勢いで、北条を落とし、徳川を下し。

魔王・織田信長の軍勢でさえ、竜に率いられた軍の前では、無力だった。



天命の意を得しもの。
女神の微笑みを受けしもの。
其れが伊達であったのだ。
天の趨勢は、既に伊達へと流れている。

・・・長曾我部に、天意の恩寵は無いのだ。
 

どう足掻いても、此の戦

勝ちは、無かった、最初から。



なのに
儚く溢れる感情に、心は未だ焦がされて




(最期に・・・お前に、逢いたかった・・・なァ・・・・・・・)



永久に喪われた、其の面影ばかりが胸を打ち

己の血に塗れた両手を沈黙のままに差し出す

静寂の空まで舞いあがる風を求めて







晴れた黎明の空には 何も無いのに








―――――――― ちか



―――――――― 愛してる、ちか







今も耳に蘇る
甘く、優しく・・・刹那い、聲




ああ、俺も
お前のこと愛してる、佐助




お前の傍へ逝きたいよ
其処へ逝きたいと願う最期の弱音を許してくれ


(何時の時代も・・・鬼は、やられるさだめ、らしいなあ・・・)




閉じて逝く、視界の其の果てに幻視するのは



眠る海を映す、夜明け前の空で

俺を待つように佇んでいる、お前の後ろ姿







『あなたの傍にゆけるのなら
 命の終焉さえ、幸せの条件』







もう開く事のない眸に映る

水のない 晴れた海

何も無い 晴れた空







あの空は、スベテの還るべき場所

影よ、鬼を愛し鬼に愛された唯一の存在よ


(俺は、お前の所に逝けるだろうか?)



夜が、明けきる前までに。











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結構前に、何かごそごそ書いていたバトテニ文をリメイク。
100のお題のひとつで、トリシシで書いてました。
ボンヤリイメージしていた歌に思いっきり引きずられていたんで、タイトル其れに変えてしまいました。
で、コレ。
救いというモノが脳内に皆無なのは変わらないようです、今も昔も(アイタタ)