※ ご注意!!
『クレイモア』のダブルパロで、グロ表現過多です。
三成が普通に東軍武将をジェノサイド。

グロ表現が嫌い、長浜っ子が本気でいがみ合っているのは勘弁、
東軍贔屓なんだよね、ダブルパロは厭、
破月自体抹消してやりたいくらい嫌い

以上に、当てはまる項目がある場合は、閲覧をお奨めできません。



平気な方だけどうぞ↓へ・・・


















「漸く寝返ったか。」

其の台詞を聞いたとき
左近は、この世の終わりを知った。




関ヶ原の戦は、初めのうちこそ西軍の有利だったのだが。

「正義はやはり、徳川殿にあり!!」

秀吉の一族の、小早川が・・・裏切った。
其処から先は、まるで下り坂を転がる小石に似て。
気がつけば、お味方は総崩れ。
無二の親友と仰いだ大谷刑部の軍勢も、先ほど大将自刃との報が入っていた。

「左近。残っている味方はどの程度だ?」

嗚呼、だと言うのに
三成の気色には焦りも、怒りもなく

「小西勢と・・・安国寺が頑張っているようですな。」
「其れ以外は?」
「残念ながら。」

答えれば、ふん・・・と。
納得したような、莫迦にしたような、吐息が零れる。

「一番口うるさいのと、何も事情を知らない老人が残されたワケか。」
「殿、どうか、お逃げ下さい。此処は左近が、」
「重傷のお前に出る幕など、無い。」

突っぱねるように
皆まで言わせず三成が口を開く。
先ほどまで赤茶にそよいでいた彼の髪は既に、刃色へと変貌していた。

「俺が殲滅してくれば終わる話だ、左近。大剣を“返して”もらうぞ。」

振り返る眸も既に、銀色。
左近は全てを諒解した。もう止められない。

「“覚醒”しないよう・・・気をつけて、下さいよ。」
「カスども相手ではしたくとも出来ん。安心しろ。」

華奢な体に不釣り合いな大剣を背負い、三成が本陣を去る。
静まりかえった其処には左近だけが、残された。




「本当は、こうならなければ何よりだったんだがね。」

残された左近の独白が、秋空に虚しく響く。

「銀眼の斬殺者・・・まさかそんなモノがいるとは、あのタヌキも思うまい。
 秀吉公、あんたはとんでもないモノを遺して逝ったよ、本当に・・・。」

記憶は廻る。
其れは、今となっては左近しか知らない、【石田三成】の真実・・・





『俺は秀吉様に拾われたとき、寺に預けられていたのだ。』

何時だったか
三成自身の口から聞かされた、彼の素性。

『家族は頑として語ってなどくれなかったが、村の人間たちの視線で分かる。
 俺は人間ではないのだ。』

銀の輝きを放つ、刃色の髪
冷酷な色彩に沈む銀の眸
透けるように白い肌、人間らしからぬのは外見だけではない

『寺に預けられたことを恨んではいない。其処で人間世界に溶け込む術を学んだ。』

外見だけでも何とかなれば、あとはどうとでも。

『人間にも色々いるからな。性格、ということで皆詮索もしない。』

以後彼は、普通の人間として生きてきた、筈だったのだか。


『賤ヶ岳だ。莫迦共の挑発と敵方の猛攻で、少々タガが外れた。』

其の細腕では振るえぬはずの剣を軽々振り回し、屍体の山と血の海を造った、と。

『剣を封じたかった。思いついたのは山崎で見えた左近、お前しかいなかった。』

斯くして、本来三成の持ち物であった斬轟一閃刀は左近の手に渡り、
三成は戦闘用の扇を振るう戦の日々が続いたのだが

秀吉の病没、徳川の台頭、避けられない全面対決。
三成の、人並み外れた第六感は予期していたのだ、この戦は無理だ、と。

『人間として戦うことの許されないものになるだろう。そうなったときは、左近。』

頼む。

何を、と問い返すことすら許されなかった。ただ、

『仰せの侭に。』

恭しく頭を垂れた夜、忘れられない傷跡。





華奢な背に大剣を背負い、場違いなほど悠然と三成は進む。

「三成!無様な負け戦の総大将が出て来おったか!」
「無様なのは貴様の面だろうが、正則。」
「何だと・・・・・・・」

憤怒相の福島の首が、コロリと堕ちる。
場が凍った。
そして皆気付いた、三成の髪と眸の色に。

「正体を現したな!賤ヶ岳の時は秀吉様に宥められたが、今回は言い訳出来んぞ!!!」
「清正か。新陳代謝の活発な脳で、よく覚えていたではないか。」
「ほざけ!!」

斬りかかったのは、清正。
四散して散らばったのも、清正。

兵は戦いた。敵も、味方も。
三成は、其の背に負った抜き身の大剣を振るうことなく
二人の人間を瞬時に屠ったのだから。
正確に言えば抜刀していないのではない。
ただ・・・
其の剣舞はあまりに高速すぎて、人間の目に映らなかっただけ。

「次に死にたい東軍武将は何奴だ?」

花でも手折るように
嫣然と微笑む三成の姿は、正に悪夢であった。





「服部半蔵様、お討死!!」
「稲姫様、重傷につき撤退!!」
「申し上げます、小早川勢、全滅いたしました・・・」

次々と
勝ちを確信した家康の元に飛び込んでくるのは、無惨に敗走していく味方軍勢の様相ばかり。

「一体、どういうことだ・・・」

吐き出すように呻く。当然である。
寝返りもうまくいった。
西軍武将は悉く打ち破った。
敵総大将の三成に、最早勝機など。

今、この関ヶ原に何が起こっているのか。

隠しきれない厭な予感に苛まれる家康の元に、新たな伝令か舞い込んだ。

「本田忠勝様が敵将と交戦中!苦戦につき援軍をとの知らせでございます!!」
「なんだと!!!?」

忠勝が
徳川の守護神が、苦戦!?
最早将らしい将もいないはずの西軍の、一体誰が!!

「忠勝は何者と戦っておる!?」
「は、それが・・・」

言いにくそうに
伝令が口ごもる。

「出で立ちからして・・・敵総大将・石田三成と思われるのですが・・・」
「莫迦な!!」

家康は吼えた。

三成だと!!?
あの色の白い、線の細い、佐和山の狐が忠勝を圧倒しているなど!!

「儂が出る!馬の用意を」
「不用だ。もう俺は此処にいる。」

深紅の返り血に身を染めて
刃色の髪を風になびかせて

家康の見知らぬ【石田三成】が、其処にいた。



銀髪、銀眼。
凡そ人間とは思えない、凍るような絶美。

「忠勝はどうした・・・」

低く問えば、

「ああ、連れてきたぞ。それなりに強かったが、まだまだだな。」

軽々と投げつけられたのは、何かズシリと重たい“モノ”

「狐一匹倒せぬ者が守護神とはな。徳川の壁も存外脆いではないか。」
「ただ・・・かつ・・・・」

胸に大穴の空いた、本田平八郎忠勝の、亡骸であった。

「貴様は一体、何なのだ。」

一歩、一歩。
近寄ってくる血塗れのイキモノに、家康は問うた。

「知らんな。俺自身、俺が何なのか・・・。まあ、知ったところで何も変わらん。ああ、だが、」

ふ、と。
三成の白い唇が微笑する。
明らか、其れは嘲笑の色彩であった。

「貴様は信長から聞いているのではないか?人間に酷似していながら、人間ではない何かのことを。」

忘れたか、痴れ者。
抜き身の大剣が煌めいて、記憶を乱打する。

「銀眼の・・・斬殺者・・・」
「そうだ。貴様ら人間は俺たちのことをそう呼んでいるのであろう?」

甦った記憶は、僅か半瞬の後に暗転する。


家康の首は胴から転げ落ち、
吹き出した己自身の血が造った水溜まりへ



赤い服を纏った人影が帰陣する。
左近は、「綺麗な顔して、やるじゃないですか。」と力無く笑った。

銀眼の斬殺者。
華奢な体に不釣り合いな大剣と、人間ではない別な命を持ったイキモノ。
ヒトの親から生まれながら、化け物以外の何物でもない生命体。

「覚醒しないで何よりです。」
「したくとも出来んと言っただろうが。」

不機嫌そうに言う三成。しかし左近は心の底から安堵していた。

覚醒。
曲がりなりにも人間らしい外見に収まっている彼が、完全に化け物となることを指す言葉。
そうなれば、殺すより他はない。
あの本田忠勝が相手では、と危惧していたのだが、杞憂に終わった。

安堵する反面・・・胸が締め付けられた。

ああ、こんなにも可憐な“このひと”は本当に、人間ではないのだ、と。
痛いほど左近に、現実を突きつけたから。



「左近、頼みがある。」
「・・・何でしょう。」

安堵と痛みの狭間で揺れていた左近の意識を。
真剣な三成の声が呼び戻す。

しかし、告げられたのは残酷な、あまりにも残酷な

「俺の首を刎ねてくれ。」

そして純粋な・・・願い。



「銀眼の斬殺者が、世に必要とされる時代は終わったのだ。」
「しかし、此処で貴方が消えたらまた世は混乱します。」
「幸村と、兼続がいる。奴らが義の世を築く。問題ない。」
「しかし・・・」
「左近。」

渋る左近を
銀色の眸が真摯に、見据えていた。

「人間ではないモノが、人間の世界に長く止まりすぎてはならない。
 今までは乱世だった。太平のためならば、喩え人外の身であろうとも目指した未来の為、
 戦わなくてはならぬ時代だったのだ。」

其れが、今、終わった。

「ならば人の世には、相応しく生きる者だけがいればよい。俺は此処にはいられない。」

穏やかな
春の海のように穏やかな、声だった。

「お前の手で逝きたいんだ。頼む、左近。」

言いながら差し出される大剣。
左近の手に馴染んだ、其の感触。

「このまま生き長らえれば、俺は何れ完全な化け物になるしかない。
 そうならないうちに・・・お前が綺麗だと言ってくれた、この姿で死にたいのだ。」
「分かりましたよ、殿。」

清廉な、魂。
清廉な、心。

人間ではないはずの貴方は、どうしてこんなにも美しくて、美しすぎて。


振り下ろした刃
転がる首は穏やかに微笑んでいた

「今まで・・・ご苦労様でした、殿。」

拾い上げた首の美しさに、左近の視界は歪む。
ああ、何だって良かったから貴方の傍にいたかった。
貴方が何であれ、本質は変わらない。
不器用で、頑固で、可愛い貴方の傍にいたかった。


「お一人でなど・・・逝かせられませんよ。」

付いてくるな、とは言われていない。
ならば

「黄泉路の果てまでも、お側に。」

切り裂いた首から噴き出す血は熱く
しかし、直ぐに冷えて・・・何も分からなくなった。