此の手は、とうの昔に血塗れて

其の毒を隠すかのように、何時しか荊が巻き付いた

延わせた此の鋭い棘に

どうかどうか、傷ついて仕舞わぬ事を





【 枳−karatati− 】





紅く染まった此の手を、伸ばすことが赦されるのなら。


(参った・・・・)

込み上げる不快感に、佐助は途方に暮れる。
佐助ほどの忍びになっても、どうしても拭い去れない想い。

人を、殺め続ける罪悪感。
其れでも、終わる気配を見せない戦いの時代。

恐怖と、嫌悪と。
押さえきれない諸々の感情から、叫び出したい衝動に駆られる。
非道い時など、己の喉笛を掻き切って仕舞いたくさえなる程。

『 モ ウ 、 タ ク サ ン ダ ・ ・ ・ 』

どれ程上手に殺したところで、所詮は人の魂、人の心。
他を傷つける鋭い棘は、己を傷つける荊となって降り注ぐ。

佐助とて、例外でなど無くて。


俺は、枳の棘だ・・・・・


止めようとすればするほど、深みに堕ちていく、そんな袋小路の思考回路。

沈み逝く想いを止める為、いっそのことさばさばしてしまえるくらいの血に染まるか

でなければ、愛だの恋だのといった想いの欠片もない、一夜限りの夢におぼれてしまうか


どちらかの手段で、強引に吹きこぼれそうになる感情を塞いできた、ずっと





けれど、今は


「どうした佐助?腹でも痛いのか!?」

唯一無二と仰ぐ、無上の主。
少しでも落ち込んだような素振りを見せれば、先ず真っ先に飛んでくる、人。


「まーた幸村、お前佐助を困らせたな!?」
「ち、違うでござる内藤殿!!」
「佐助、幸村のワガママが過ぎるので有れば、拙僧と内藤で厳しくお仕置きするから、安心して言え。」
「や、勘助兄ィ・・・其れ安心て言えないと思うよ、オレ。」
「軍師殿までーーー!!俺は無実でござるぅぅぅぅぅぅぅッッッ!!!」

賢才の紫水晶と仰がれる軍師。
月長石の精のように美しい、武田の参謀。
心というモノの機微に、これでもかというくらい気遣ってくれる、優しい、人たち。


「なんじゃ、夜を待たずに怪談大会か!?」
「ちょ、大将!!何其の反応!!何で怪談よ!」
「幸村、肝試しには本物の幽霊を呼ぶからなvv」
「修理亮・・・執り行う気か、お前。」
「ゆうれいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!ぎぃやぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
「旦那、まだ決定されてないことで驚きすぎ!!」


懐が深く、豪快で、暖かい総大将。
其の力強い腕に、護られているような気さえするんです。

忍の者 草の者

命を命とさえ扱えない、こんなオレなのに

棘でしかないオレなのに


こんなにも、こんなにも

あなたたちは、優しくて、暖かくて、眩しい



(棘でしか、荊でしか在れ無いのなら)

(其の棘でしか、成せぬ事を)


そう思える力をくれた
大切な人たち
此の両腕で、護りたい人たち



食べられない、枳の実
棘は、其れを隠す為の虚勢
傷つけるしか能の無い、闇色に堕ちた刃でしかないのか
暖かな光射す丘で、其の輪の中に在ることの出来ない、闇なのか

今、迄は・・・そんな

抜け出せない思考の海に、捕らわれて、居た。

けれど

この光を
この焔を

護る荊で在れば良い
護る棘で在れば良い

其れが成せる腕があることを、今は唯、幸いと。



今までは、唯無心に、枳の棘であれと

光遮る荊であれと

心を殺し、己を殺して生きてきた




俺は、枳の棘
闇い、毒の棘

けれど

それでも

其の腕でしか、成せぬ事を抱いて


此の、光射す丘で、必死に生き続けている









††††††††††††††††††††

『枳』は、破月はずっと関ヶ原西軍テーマソング扱いしてきたんですが。
友人から、BASARAのイメージではどうかと言われて、だったら佐助かなあ、と思って。
2なら半兵衛辺りのイメージかも知れない。

サスユキでいこうと思っていたのに、気が付けば武田軍のみんなから愛されている、幸せな佐助の話に・・・
内藤もばっちり出てるしね・・・お前相変わらず吐く科白間違えてないか、誰だ云わせたの(お前だ破月)

なのでサスユキ妄想し直したら、不朽の名曲が凄いことになってしまいましたとさ・・・(埋まって仕舞え)

11日に、破月と遊んだ下さった神様方。
もしもこの部屋を発見されましたならば、此方もお持ち帰り可となっておりまする故・・・(超要らない)