白い朝陽が、静かに地平線を染めた。
無垢な其の光に照らされ、竹中半兵衛の顔は穏やかだった。
永劫醒めない、眠りの淵に在って・・・尚。
【 終ノ刻−聲− 〜白き破滅と黒き奈落〜 】
白い大地に横たわる彼の姿を、労しげに見遣って。
勘助は、静かに唇を開いた。
「刻(トキ)の赦す限り其の命を燃やした生き様・・・少し、羨ましいよ、竹中。」
朱に染まった口元。
襟から胸にかけて、此方も同様鮮赤に染め上げて。
迫り来る最期の際で、敢えて突き進む道を選んだ。
華々しく生き急ぎ、散らせた、命。
「刻まれ逝くのが早すぎる“時”というモノは、無惨だ。けれど・・・。」
刹那、
勘助の秀麗な微笑が悲しげに歪む。
「とうの昔に止まったまま・・・永劫動かぬと云うのも・・・辛いぞ。」
“生き急いだ”とは即ち、命の基本である流転の中で、輝き続けた魂であるということ。
其れ、は。
勘助の掌からは、滑り堕ちて失われたモノであった。
止められた時計、動かない時間。
半兵衛のように、残された時間があまりにも少なすぎた者にとっては、何よりも羨むべき言葉に聞こえただろう。
けれど。
変われない姿、終われない命。
其の左眼に刻まれた、蒼い蒼い刻印に蝕まれた魂。
人として紡がれるべき時間の流れから、はぐれ戻れなくなった魂。
嗚呼・・・果たして、其れは・・・本当に・・・?
「何れ、お前の最愛の友も、其方へ逝くであろうよ。其の時こそ・・・」
終わるからこそ
散るからこそ
命は咲き誇り、輝くのだ
人は、其の命をあらん限り燃やすのだ
だから
「幸せに、なれ・・・現世で、生き急ぎ散り急いだ、其の分まで。」
遙か海の彼方の常世で
地平線の彼方の楽園で
咲き誇り燃やし尽くした魂が、輝き続けるように
「拙僧は、・・・永劫此処から、其れを祈ろう。」
すべての朝陽に
すべての黄昏に
流転を続ける此の世のすべてに
「何時か・・・此の魂、朽ち果てるまで。」
歌うような低い声は、夜明けの光の中に溶けて消えて。
ハジマリと、オワリのハザマ
幾度と無く繰り返される、生命の生々流転
其の先へ逝けるモノ 其の先に拒まれしモノ
何れもが抱く痛みを照らして、唯朝陽は静かに清浄に。
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残り少ない時間を、生き急いだ男というのが、破月の竹中のイメージです。
勘助は其の真逆。終われない命を抱いた“死に拒まれた男”。
竹中としては、この噂は聞き捨てならないかな、と。
斯くして妄想したのが、こんな勘助シナリオのED。
竹中と勘助の一騎討ちです。
勝者は、まあ・・・勘助ですが。
Quick Drop様の『眠りゆく森』を聴きながらもんまりと。
音楽をお借りしたサイト様へは、此方からどうぞ。