晴天を引き裂くような
銃声が、一発。
【 高 嗤 ヒ 】
かすがの銃口は、確実に佐助の眉間を捉えていた。
――――――― 殺られる・・・!!
思わず、佐助は固く目を閉じる。
しかし。
高らかな銃声の直後、聞こえた音は自らの頭蓋が砕ける音などではなく。
清げに澄んだ金属音と
そよぐような、一陣の風の声。
「勘助兄ィ!!!」
恐る恐る目を開ければ、其処に。
ふわりと風を纏ったような、勘助の背中。
「久しいじゃないか、かすが。天下の趨勢は定まったというのに、君の心酔する軍神殿は、
血生臭い争乱の宴を御所望か?」
皮肉な微笑を刻んだ勘助の唇が、痛烈な言葉を放つ。
瞬間、かすがの白い頬に、かっと怒りの朱が上る。
が、勘助の実力は、厭になるほど身に染みているかすがである。
怒り任せの短慮は起こさず、ただ忌々しげな舌打ちだけ残して、彼女は姿を消した。
「勘助兄ィ・・・・・。」
「佐助。悪いが最後にもう一仕事だ。」
銃弾の痕も生々しい手斧を翻し、低く歌うように勘助は続ける。
「旧時代の禍根も、因縁も、全て断ち切らなくては。天の命数は定まらない。」
其の、言葉が。
暗に指し示す意味は。
「オレも、行くの?」
勘助も佐助も、己の独断のみで大軍を動かせる立場には、無い。
けれど。
「一人でも二人でも、しでかす事の危険と困難に大差はないし?」
忍の長と、忍よりも闇い淵に堕ちた軍師の二人なら。
深遠の漆黒を味方につけて
夜に乗じて
「狩れるさ・・・軍神と、添い咲く陽炎くらいなら。」
「・・・うん。」
佐助の答えに
勘助の笑みが、音もなく、色を変える。
冷たいだけの静かな笑みから
狂気に満ちた、高笑いへと。
「軍神狩りだ・・・・アーッハッハッハッハッハ、アーッハッハッハッハッハ!!!!」
耳をつんざく笑い声は、腹立たしいほど澄んだ晴天に響いて消えて。
地上では、その狂気に気付いていない信玄と幸村が、延々と拳での語り合いを続けていた。
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脳内妄想!勘助のエンディングです。
武田軍四人組のエンディングは、幸村→信玄→佐助→勘助で完結するイメージ。
実際、登場している3人はエンディング繋がってるから、其のノリで。
・・・この二人、返り討ちにでもされそうで、心配。
最初は、勘助の右足義足にしてあるから、何処かのリナリーみたく
足で庇わせようかと思ったんですが。
折角、斧男もイメージのモチーフに使っていることだし、と思って、
斧ガードにしてみた次第。
脳内妄想で文作っていった所為か、なんだか長くなってしまった・・・。
旦那と大将、屋根の上の一悶着に気付こうよ!!
遠来未来様の「赤の乱」を聴きながら、のたりのたりと。