此の、脈拍が
止まってしまうのは、何時?
一ヶ月後・・・?
一週間後・・・?
嗚呼、其れとも・・・・・・・・・・・
玉の緒が、絶えるというのなら 其れは仕方のないこと
ならば其の最期の一瞬まで
君の 傍に 在りたい
(けれど・・・絶えさせない方法があるのなら、嗚呼・・・何としてでも手に入れたい)
【 白き破滅の幻灯 】
・・・あなたの 為に、生きて・・・いきたい・・・・・・
夏の草むらで、虫が集いていた。
照りつけた日中の灼熱も、何処へやらの風情の中。
半兵衛は、秀吉の腕に抱かれていた。
「暑くは・・・無いのか。」
天下の其の名を轟かす、烈界の武帝が。
労りと慈しみを隠そうともしない、優しい声色で問う。
半兵衛は、ゆるり笑って、頷いた。
「大丈夫。其れにね、秀吉。ヒトの心音というモノには、心を落ち着かせる効果があるんだよ。」
一組しか敷いていない布団の上、逞しい胸板に、頭を預けるようにして抱かれていると。
丁度耳元に、力強く、規則正しい、命の流れる音がするのだ。
半兵衛は、其れが何よりも好きだった。
其の音に包まれて、其の腕に抱かれて、微睡むのが好きだった。
(嗚呼、僕の何時止まってしまうか分からない其れと違って)
耳を打つ、其の音に、癒される。
何時、絶えて仕舞うのだろう、と。
思うことが最近、増えた。
咳と共に零れ落ちる、血の量も増えた。
其れを見る度、思う度、彼岸の近さを思い知った。
目を閉じ、黙り込んでいると。
唇に何か、暖かいモノが触れた。
「珍しいなあ・・・どうか、したかい?」
「いや・・・気にせず、休め。」
口吻けを落とした彼の人は、照れるでも、赤面するでもなく。
優しくそう言って、再び夜闇と沈黙だけが温い風の中を流れていく、暗い部屋。
白い人差し指の先で、そっと、今し方秀吉の其れと触れ合った、己の唇をなぞる。
(生きて・・・いきたい、君の為に。)
とうの昔に、命を惜しいなどと思わないよう、心に言い聞かせた筈だったのに。
魂を共有しているかと思うほど、愛おしいこの友人の傍らにいると。
尽きかけた自分の命数が
非道く、呪わしくて堪らなく、なる。
秀吉のことだから、もう悟っているのだと、思う。
半兵衛の余命が、もう幾ばくもないこと
元々屈強な体格ではなかったが、此処最近特に肉が削げ落ちたこと
色白だった肌が、透けるほどに白く病的に変わったこと
何もかも、気付いて、見通しているのだと、思う。
(けれど、君は何も言おうとはしないんだね、秀吉。)
優しい優しい、武帝。
半兵衛の望むままに彼は。
(弱音など吐きたくないと、泣き言など言いたくないと、僕がずっと振る舞ってきたから)
其の、願いのままに、何も語らず、そして半兵衛にも何も言わせず
最期を、看取るつもりで居るのだろう。
其れは、とても優しくて、とても残酷な、彼なりの愛情
「ねえ、秀吉。」
「どうした。」
(知っているよ、其れが君の無償の愛。)
(僕は最大限、其れに答えたい。)
心に紡ぐ言葉とは、かけ離れた科白を。
静かに、半兵衛は口にした。
「武田の闇軍師のこと、知っているだろう?常勝不敗にして、不老不死の紫水晶。」
「ああ。我が軍に引き入れるは不可能と、お前が唯一諦めた相手だったな。」
云いながら、互いに脳裏に思い描く。
背筋が凍りつくほどの、凄絶な美貌。
手斧を軽やかに繰る白い腕、金属的な狂気の高笑い。
山本勘助、彼の人の、姿。
(絶えて仕舞うのなら、惜しいとは思わない、けれど)
(長らえさせる道があるのなら、手に入れたいんだ)
「あの闇軍師が、どうした。」
「・・・一対一で、知勇を競い合おうと思って。」
行かせて、くれないか。
言ノ葉には乗せず、見上げる視線に込めて、問う。
心持ち、秀吉の表情が強張っているように、見えた。
「・・・駄目かな。」
「否。止めは、せぬ。其れにお前は、止めても聞かぬ気であろう?」
「さすが秀吉。よく分かってるね。」
約束の日は、明日。
云われることも自分の心も、分かり切っていたその上で、敢えて口にした理由は。
(これは、僕の覚悟。)
見果てぬ夢の彼方を、垣間見る為の唯一の方法。
どうしても描くことが出来なかった、君の傍らに在り続ける未来
其処へ、辿り着ける可能性があるのなら
「有り難う、秀吉・・・。行って、くるから。」
「うむ。」
(呪いだろうと、、何だろうと構わない。君の・・・)
君の傍に、居られるのなら。
満足したように、瞼を閉じた瞬間、
「帰って、来い・・・必ず。」
ぽつり、囁かれた其の言葉だけを抱きしめて
必ず、必ず此処へ・・・
君の腕の中へ、帰ってくるから。
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半兵衛は、秀吉の心音を子守歌に眠りに就いていると良いなあ。
そんな妄想が最近アツイです、痛々しい闇人乙型です。
いろいろと、脳内補完が為される話だから・・・まずは裏設定でも・・・(痛)
てゆか、オリキャラの脳内妄想シナリオが元ネタって、破月の痛々しさは
エリュシオンという名のアビスですか、そうですか(もうみんな知ってる)
もさもさ語ってますが、オリキャラ設定話含みますので、
其の手の話が嫌いな方は此処でリターンお願いします。
まず。
設定は『勘助シナリオ最終話前夜』という、激痛此処に極まれり!にもほどがある舞台。
半兵衛と秀吉はラブラブで、でも半兵衛に残された時間はもうカウントダウン状態で。
うちの勘助は、比喩でも何でもなく、文字通り呪われていて年齢取らなくなっている
人なので、常勝不敗の武田騎馬軍団の噂と共に、不死の軍師つーことで
尾ひれ背びれついた話が、各地に広まって居るんです。
で。
そんな話があるのなら、竹中は興味持つかなあと。
秀吉の傍にいる為なら、どんな手段に手を染めても構わない人なんで、破月の脳内竹中は。
だもんで。
勘助シナリオ最終章は、竹中と勘助の一騎打ち。
其の前夜の話竹中サイド、つーのがこの話。
半秀、難しいなあ・・・
ほとんど半兵衛しか出てきてない、てゆか・・・喋って無くないか、コレ。
神が降臨したら、また書きたい。
地下拷問部屋送りでも良いから、また書きたい。
ネタは『天鵞絨の闇』で(待テ)