【 収束への布石 】



時間は少し遡って。
兼続が駈け出していったあと、キノトは左近の部屋を訪れた。

「おれの発言でそんなことになってるんですか!?」
「ああ。三成は随分気に病んでいるようだった。」

マジすか。
流石の左近も予想外だったようで、呆れたような溜息を深々吐くばかりだった。

「まいったな・・・正直に誉めたつもりだったんですがね。」
「あいつが其れを素直に信じるか?世辞だと思っているようだな、どうも。」
「其れなら其れで良いのに、何で悩むかな彼の御仁は。」

少しばかり。
自分という存在が、三成の中でどれ程重要か、量り違えているようだったので。
余計と思いつつキノトは言ってしまった。

「お前の言葉だからだよ、左近。」

やや、厳しさを含んだ“頭領”の声色に。
左近は少したじろいだ。

「キノト・・・」
「お前の言葉を信じたいのに、其処で素直になれないのが三成の人となりだ。違うか?」

真剣に。
黒い布の下の眸が、三成と同じ鋭さで見つめているような気がして。
左近は、事態の重大さが身に染みた。


「行っておあげ。きっと混乱して、噴火寸前だろうから。」
「分かった。・・・キノト。」

何時になく凛とした表情で振り返る左近に。
キノトは、柔らかな笑み混じりで答えた。

「何だい?」
「すまない。いらない世話をかけたようだ。」

言うが早いか、主のもとへ走り去る背を見送りつつ。
何処か晴れやかにキノトはひとりごちた。

「本当に・・・何処かの誰かさんと同じ。しっかりしてる癖に抜けているんだから。」

事件収束の黄昏時。
茜空の向こうの故郷へ、キノトはそっと想いを馳せた。











そういえば、左近が事態を知らないままだった・・・。
ので、かっこいい頭領書きつつ、左近を巻き込み。
ちなみに頭領が言っている「誰か」とは、頭領の副官さんのこと。
左近と同じ顔した、頭領命!のヒトです。