【 お前もか!?〜大混乱編〜 】
「キノト、顔を見せてくれ!!」
力強い足音がした、と思う間もなく。
力一杯障子が開け放たれ、使命感に燃えたような雰囲気いっぱいの兼続は開口一番、そう言った。
「え、ちょ、兼続?!」
言葉を差し挟む暇もない。
つかつかと大股に寄ってきて、あっという間に黒い布は取り払われてしまう。
其れだけでは済まさず、兼続はキノトの頬を挟むようにして顔を押さえ、其れこそ息がかかるくらいの至近距離から穴の開く程凝視してくる。
「や、あの、離し・・・・」
「少し黙ってくれないか。」
今まで。
アツい奴だ、アツい奴だと思ってはいたけれど。
此処まで熱血一筋に行動されると、辟易とする以外どうしようもない。
と、いうよりも。
(端から見たら誤解されるぞ、この体勢・・・気付け兼続・・・)
キノトの祈りも虚しく。
まさしく最悪のタイミングで訪れたものが、一人。
「おーい兼続!三成と幸村が呼んで・・・おおおお!!?」
「おお慶次、良いところに来てくれたな!」
(いや、最悪だよ兼続・・・)
キノトが危惧した誤解を、清々しい程忠実に慶次はしてくれたようだった。
当然といえば当然である。
顔を固定して、息のかかる程至近距離で凝視、と言えば其れだけだが。
逃げを打っているような体勢で畳に手をついているキノトに、のし掛かるようにして、という条件が加われば・・・。
「いや、お、俺は何も見てねぇからな!悪ィ邪魔した!!」
“お取り込み中”のところに突撃してしまったのだ、と。
思わない方がおかしいだろう。
「あっ、待ってくれ慶次!お前もキノトの顔を・・・」
どうやら誤解されたことに気が付いていないらしい兼続は、まだそんなことを叫びながら慶次を追いかけて去っていく。
漸く解放されたキノトは、流石に困惑の色を隠せずにぼやいた。
「・・・顔、隠すのやめようかな。」
其れより先に、この騒動何とかしないと。
手早く布を巻き付けながら、決意したキノトであった。
愛の戦士大暴走!そりゃ頭領だってぼやきたくもなります。
慶次は、頭領と三成が同じ顔なのは知っていたんですが、咄嗟のことなので
「真っ最中に突撃したか!!?!?」と大混乱した次第。
すぐ誤解は消えました。