【 お前もか! 】



「キノト殿、お願いがございます。」

明くる日の昼下がり。
何時も生真面目な幸村が、妙に強張った面持ちで口を開いた。

「わたしに手伝えることかい、幸村?」
「はい。その・・・」

生真面目を通り越して、思い詰めたような表情。
何事かと、キノトは少し身構えた。

「・・・顔、を。」
「は?」

なんだか厭な予感がするのだが、時既に遅し。
覚悟を決めたように、幸村は一気にこう言い放った。

「顔を、見せて下さい!!」
「・・・幸村、お前もか。」

呆れ混じりに言いつつも、素顔を見せてやるキノトであった。
物憂げな表情を浮かべた其の顔は、いつもよりも三成らしい印象が強い。
暫し眺め遣ってから、幸村は困惑気味に礼を述べた。

「すみません、三成殿が気にしていて・・・」
「知っているよ。左近の発言だろう?」
「ええ。自分でキノト殿の顔を見てみたがよく分からないから、と・・・。」

嗚呼、これだから生真面目な人間は。
内心でキノトは、盛大に溜息を吐いた。

「左近が綺麗だと言うんだから、其れを信じてやればいいものを。」
「そうですね。三成殿にも、そう伝えます。」

去っていく幸村の背を見ながら、キノトは小さく呟いた。

「・・・まだ、続くのだろうな、この騒動。」



ちなみに、キノトの予感はしっかり的中することとなる。










続きです。幸村巻き込んで騒動は拡大・・・。
頭領は一々こういうこと気にしないひとなので、「いずれどうにか落ち着くさ」と構えてます。
とはいえ、まだまだ続く騒ぎですから。
次は、事態をややこしくする天才(酷!)の登場です。